副業禁止の会社でどう動く?個人事業主としての起業準備とリスク管理

夜の書斎でニュース記事を読みながら自身の今後の働き方について考える50代男性 安全・トラブル対策
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2024年5月、大手総合商社の伊藤忠商事が全社員を対象に副業を解禁しました。本記事では、その具体的な制度内容や競合他社の動向を詳しく解説し、終身雇用が崩れゆく中で50代がどう自分のビジネスをスモールスタートすべきか、私の実体験を交えて現実的な一歩をご提案します。

2024年5月、伊藤忠商事が全社員の「副業」を解禁。具体的な制度内容とは?

2024年の春、日本のビジネス界、特に保守的なイメージの強い業界に大きなインパクトを与えるニュースが報じられました。

日本を代表する総合商社である伊藤忠商事が、2024年5月1日より全社員(約4,200名)を対象とした副業制度を正式に導入したのです。

これまで、総合商社のような機密性の高い情報を扱い、かつ国内外でハードな業務をこなすため高い職務専念義務が求められる業界では、副業は原則として固く禁じられているのが一般的でした。

しかし、伊藤忠商事は今回、一定の条件を満たすことを前提に、所定労働時間外や休日を利用して社外で業務を行うことを全面的に認める方針へと舵を切りました。

この制度の具体的な内容と条件を紐解くと、大企業ならではの「リスク管理」と「社員の成長促進」のバランスを慎重に取っていることがわかります。

まず、大前提として「本業に支障をきたさないこと」が厳しく求められています。

副業を行うには事前の申請と会社の承認が必要であり、深夜労働や長時間労働に繋がらないよう、月間の副業時間には上限が設けられ、労働時間の厳格な管理と健康管理が条件となっています。

また、「機密情報の漏洩防止」や、自社のビジネスと競合するような「利益相反の禁止」も明確に定められています。

さらに重要なポイントとして、他社と「雇用契約(アルバイトやパート)」を結ぶ働き方よりも、自ら個人事業主として活動したり、業務委託契約を結んだりする働き方が想定されています。

これは、労働基準法における「労働時間の通算」という複雑な問題を回避しつつ、社員に自律的なスキルアップを促すための合理的な判断だと言えます。

長年「朝型勤務」の推奨などで働き方改革をリードしてきた同社ですが、今回の全社的な副業解禁は、社員を自社の枠の中だけに留めておく時代の終焉を象徴する出来事です。


五大商社など競合他社の副業制度はどうなっているか?他社との比較

伊藤忠商事の決断は、決して孤立した動きではありません。日本の五大商社をはじめとする競合他社でも、副業に対するスタンスはここ数年で大きく変化しています。

たとえば、丸紅は早くから社員の新しい働き方を模索しており、就業時間の15%を新しいビジネスの創出や自身のスキルアップにあてることができる「15%ルール」を導入しています。

また、社外での副業についても、会社の承認を得た上で、自社の事業と競合しない範囲であれば一定の条件のもとで容認する姿勢をとっています。

三井物産も、これまではシニア層のセカンドキャリア支援など限定的な枠組みでの副業を認めていましたが、社会全体の多様な働き方の推進に合わせて、制度の対象者や条件の拡大を慎重に検討・実施するフェーズに入っています。

双日に至っては、若手からシニアまで社員の自律的なキャリア形成を支援する目的で、いち早く副業制度を取り入れ、社外での経験を社内に還元する仕組みづくりを進めてきました。

このように、各社それぞれにアプローチのグラデーションはあるものの、「副業を全面的に禁止し、社員を本業のみに縛り付ける」という従来のスタンスは、もはや業界のスタンダードではなくなりつつあります。

その中でも、伊藤忠商事というトップランナーが「全社員約4,200名を対象に一斉解禁」と明確に打ち出したことは、非常に強いメッセージ性を持ちます。

他社が限定的・試験的に導入を進める中で、条件付きとはいえ全社規模で制度を整えたことは、日本の大企業の就業規則の見直しをさらに加速させる強力な起爆剤となるでしょう。


なぜ今、保守的な大企業が次々と副業を解禁するのか

では、なぜこのタイミングで、伊藤忠商事をはじめとする大企業は副業の解禁に踏み切ったのでしょうか。

ニュース報道や各社の発表内容を総合して読み解くと、その最大の背景には「オープンイノベーションの促進」と「優秀な人材のリテンション(引き留め)」という経営上の切実な課題があります。

従来の終身雇用システムでは、会社が提示するキャリアパスに沿って、社内で様々な部署を異動しながら経験を積むことが、最も効率的な人材育成とされてきました。

しかし、変化の激しく先行きが不透明な現代において、社内の常識や既存のビジネスモデル、あるいは同質性の高い社員のアイデアだけで新しい価値を生み出し続けることには限界があります。

社員が会社の外に飛び込み、全く異なる業界の知見、新しいテクノロジー、社外の人脈、多様な視点を身につけて帰ってくること。

それは結果的に、本業である会社のビジネスに還元され、組織全体のイノベーションを加速させるという明確な経営的狙いがあると考えられます。

また、「エンゲージメントの向上」という側面も見逃せません。

現代のビジネスパーソンは、世代を問わず「自分の市場価値を高めたい」「社外でも通用するスキルを試したい」という強い意欲を持っています。

もし会社が副業を頑なに禁止し続ければ、そうした意欲的な優秀な人材は、より自由な働き方を認める企業へと流出してしまうリスクがあります。

企業側は、「副業を禁止して社員を縛り付けるリスク」よりも、「副業を認めて社員の成長を促し、自社に定着してもらうメリット」のほうがはるかに大きいと判断する時代へと、完全にシフトしているのです。


50代は「会社の副業ルール」と税務の厳格化にどう向き合うべきか?

この記事をお読みの50代の方の中には、「伊藤忠のような大企業の話はわかったが、自分の勤め先はまだ『副業禁止』だ」という方も多いでしょう。

長年勤め上げてきた会社に背いてまで波風を立てたくない、と考えるのは、社会人として極めて真っ当な心理です。

しかし、世の中のルールが変わっていく中で、最初から諦めてしまうのはもったいないことです。

まずは、ご自身の会社の就業規則を、最新版で隅々まで確認してみてください。

一昔前は「全面禁止」だったものが、社会の要請に合わせて知らない間に「許可制」や「届出制」に文言が変わっているケースも珍しくありません。

もし「許可制」であれば、伊藤忠商事の例でも見たように、「本業への支障」「情報漏洩」「利益相反」という3つの懸念点をクリアできるビジネスであれば、会社が合理的に禁止する理由は乏しくなります。

そして、これから副業を始める50代が絶対に知っておくべき重要な事実がもう一つあります。それは「税務上のハードルの高さ」です。

副業を勧めるネットの情報の中には、「開業届を出して青色申告をすれば、事業所得として大きな節税メリットが受けられる」と安易に謳うものが散見されます。

しかし、現実はそう甘くありません。近年、サラリーマンの副業による行き過ぎた節税対策が問題視され、国税庁は令和4年(2022年)に所得区分の判定に関する通達を明確化しました。

このルールにより、会社員の副業収入を「事業所得」として認めてもらうためのハードルは非常に高くなっています。

具体的には、その副業が「社会通念上、事業と呼べるだけの規模や実態(営利性、反復継続性、独立性)」を備えているかが厳格に問われます。

特に、副業の収入が300万円以下で、適切な帳簿書類の保存がない場合は、原則として「雑所得」として扱われることになります。

したがって、これから小さく副業を始める50代の皆様は、無理に事業所得としての青色申告を狙うのではなく、まずは「雑所得」として年間20万円の壁を意識しながら、正しくコツコツと申告していくことが最も現実的で安全な道です。

無断でのアルバイトなどは会社の懲戒対象になるリスクが高いため避け、ルールと税務を正しく理解した上で、パソコン1台で始められる業務委託などの小さなビジネスから準備を進めていきましょう。

※画像はAIによるイメージ

筆者の実体験:50代からの副業は「戸惑い」と「小さな失敗」の連続だった

ここで少し、私自身の経験をお話しさせてください。

私は現在、「定年前から始める“その後”の副業案内人」として活動していますが、最初からスムーズに稼げたわけではありません。

50代に差し掛かり、「このまま定年を迎えて、本当に自分の力で生きていけるのか」という漠然とした不安を抱いたのが、すべての始まりでした。

会社ではそれなりの役職につき、部下もいましたが、会社の看板を外した自分に何ができるのか、全く自信がありませんでした。

意を決してクラウドソーシングのサイトに登録した日の夜を、今でも鮮明に覚えています。

プロフィール欄に何を書けばいいのか分からない。「長年の営業経験」や「マネジメント経験」と書いても、ネット上で求められているスキルとは微妙にズレており、誰からも声はかかりませんでした。

エクセルとワードしか使ってこなかったため、指定されたGoogleドキュメントの共有方法が分からず、クライアントに迷惑をかけてしまったこともあります。

初めて受注できた仕事は、指定されたテーマについて500文字の感想文を書くというものでした。

数時間かけて必死に書き上げ、何度も読み返して納品し、数日後に振り込まれた報酬は、たったの「300円」でした。

会社員としての時給換算をすれば、割に合わないどころの話ではありません。

しかし、その300円は、会社の看板や肩書に頼らず、私個人の力で社会から価値を認められて稼いだ、生まれて初めてのお金でした。

その後も、単価交渉の難しさに直面したり、厳しい修正依頼に落ち込んだりと、小さな失敗と戸惑いの連続でした。

それでも、定年前の「本業の給料」という強力な命綱があったからこそ、焦らずに試行錯誤を続けることができたのです。

私のような不器用な人間でも、小さく始めて失敗から学ぶことで、少しずつライティングや相談業務へと仕事の幅を広げることができました。

だからこそ、同世代の皆様には「最初は誰でも初心者であり、失敗しても大丈夫な環境で始めること」の重要性を強くお伝えしたいのです。


考察・見通し:大企業の副業解禁が意味する今後の社会と50代の生存戦略

ここまで、伊藤忠商事のニュースを起点に、大企業の動向や副業を始める際の現実的な注意点について解説してきました。

ここからは、定年前から副業を実践してきた一人の経験者として、また社会の動向を追う立場としての「私見」を述べさせていただきます。

2024年の伊藤忠商事の副業解禁は、日本の産業界全体を覆っていた「終身雇用」という古い氷山が、完全に融解し始めたことを示す象徴的な出来事だと私は考えています。

かつて、会社は社員の人生を定年まで、あるいは退職金や企業年金を含めて一生涯面倒を見るという暗黙の約束がありました。

だからこそ、会社は社員に職務への絶対的な専念を求め、副業を厳しく禁止することができたのです。

しかし、大企業が次々とその門戸を開いている現実は、国や企業からの「私たちはもう、あなたの一生を完全には保証できない。だから、自分の力で稼ぐ手段を社外でも身につけてほしい」というメッセージの裏返しであると捉えています。

このメッセージをどう受け取るかで、50代の今後の人生は大きく変わります。

「うちの会社は一生安泰だから関係ない」と目をつむり、定年というタイムリミットが来てから慌ててハローワークに行くのか。

それとも、ニュースの背後にある社会の潮目の変化を読み取り、在職中の「今」から自分の名前で稼ぐ準備のための助走を始めるのか。

年齢を理由に新しい挑戦をためらうお気持ちは、痛いほどよく分かります。

デジタル機器の操作に戸惑うこともあるでしょうし、何から手をつければいいか分からないのが普通です。私自身がそうでしたから。

しかし、年齢は決して「始めない理由」にはなりません。

これからの時代において最も危険なのは、失敗することではなく、「会社という一つの収入源に、自分の人生のすべてを依存し続けること」です。

最初から大きく稼ごうとする必要はありません。起業マニュアルにあるような立派な事業計画や、事業所得としての難しい税務申告を最初から目指す必要もないのです。

初期費用をかけず、パソコン1台でできることから「小さく試す」のが鉄則です。

月に数千円でも、会社の看板を外した「自分個人の力」で稼げたという事実は、定年後の精神的な余裕に直結します。

大企業が重い腰を上げ、社会のルールが変わりつつある今こそ、ほんの少しの勇気を出して、小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

※画像はAIによるイメージ

まとめ

この記事の重要なポイントを振り返ります。

  • 伊藤忠商事の副業解禁: 2024年5月、大手総合商社が全社員を対象に副業を解禁。本業への支障や情報漏洩を防ぐ条件付きながら、働き方の転換期を示す明確な事実です。
  • 他社の動向と背景: 丸紅や三井物産など競合他社も制度を模索しており、背景にはオープンイノベーションの促進と優秀な人材の引き留めがあります。
  • 税務面での現実的な視点: 会社員の副業を「事業所得」として申告するハードルは令和4年の通達で厳格化されており、まずは少額の「雑所得」から安全に始めるのが現実的です。
  • 筆者の実体験: 50代からの副業はデジタルへの戸惑いや小さな失敗の連続ですが、会社の看板なしで稼いだ最初の数百円が大きな自信に繋がります。
  • 小さく試す重要性: 終身雇用が崩れる中、定年前の安定した時期に少額から自分のビジネスの「テスト飛行」を始めることが、50代の生存戦略になります。

世の中の変化に焦る必要はありません。ご自身のペースで、正確な情報に基づき、着実に準備を進めていきましょう。


よくある質問

Q. 伊藤忠商事の副業解禁は、アルバイトなどの雇用契約も対象ですか?

伊藤忠商事の制度では、他社と雇用契約を結ぶ働き方(アルバイトやパート)よりも、労働基準法上の労働時間の通算という複雑な問題を避けるため、自ら個人事業主として活動したり、業務委託契約を結んだりする働き方が主に想定・推奨されています。

Q. 副業が「事業所得」ではなく「雑所得」になる場合、確定申告はどうなりますか?

副業の所得(売上から経費を差し引いた利益)が年間20万円以下の場合は、原則として所得税の確定申告は不要です(住民税の申告は必要です)。20万円を超える場合は雑所得として確定申告を行う必要があります。事業所得のような青色申告特別控除(最大65万円)などのメリットは受けられませんが、その分、帳簿づけの負担は軽くなります。

Q. 副業禁止の会社で無断で副業をすると、どうなりますか?

就業規則で副業が明確に禁止されている場合、無断で行うと懲戒処分の対象となるリスクがあります。特に、深夜のアルバイト等による本業への支障、情報漏洩、自社と競合するビジネスを行った場合は処分が重くなる傾向があります。まずは最新の就業規則を確認し、可能であれば許可や届出の手続きを取るのが最も安全な道です。

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