副業の経費計上のコツとは?青色申告・白色申告の違いと損益通算の仕組み

温かい飲み物を横に置き、ノートパソコンと領収書を見比べながら落ち着いて作業をするシニア男性の手元 税金・制度
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副業収入を「事業所得」として申告し、青色申告などの大きな節税メリットを受けるには、原則として「帳簿書類の作成と保存」が必須となりました。

これは2022年に国税庁が発表した通達改正によるもので、もし帳簿をつけていない場合は「雑所得」とみなされ、事業としての税制優遇は受けられません。

本記事の要点は以下の通りです。

【国税庁「帳簿通達」の3つのポイント】

  • 副業を事業所得にするには、日々の取引を記録した「帳簿書類の保存」が原則必須。
  • 帳簿がない場合は「雑所得」となり、青色申告特別控除や損益通算が利用できない。
  • 帳簿があっても「副業収入が本業の10%未満」や「概ね3年連続で赤字」などの場合は、例外として雑所得と判定される可能性が高い。

定年を数年後に控えた50代の皆さんが、これから小さく副業を始めていくにあたり、税金のルールを正しく知ることは自分の身を守る最大の武器になります。

近年はインボイス制度の導入や税務調査の強化など、個人で仕事をする人を取り巻く環境が大きく変わってきました。

この記事では、国税庁の通達改正という重要なニュースの背景を踏まえながら、事業所得と雑所得の境界線や、具体的な例外規定、そして50代から無理なく始める経費管理の基本について、一つひとつ丁寧にお伝えしていきます。

国税庁の通達改正とは?副業の「事業所得」判定に帳簿が必須へ

まず、副業をする人たちの間で大きな転換点となった「国税庁の通達改正」という出来事について確認しておきましょう。

2022年10月、国税庁は所得税の基本通達を改正し、副業による収入が「事業所得」になるか「雑所得」になるかの判定基準を明確にしました。

結論から言うと、「その副業にかかわる帳簿書類を作成・保存している場合は、原則として事業所得として認める」という方針が示されたのです。

裏を返せば、どれだけ熱心に副業に取り組んで毎月収入を得ていたとしても、帳簿をつけていなければ原則として「雑所得」として扱われることになります。

この「事業所得か、雑所得か」の違いは、手元に残るお金、つまり税金の計算において非常に大きな影響を与えます。

事業所得として認められれば、最大65万円の控除が受けられる「青色申告」を利用することが可能です。

また、万が一副業で赤字が出た際に、本業である会社員の給与所得と相殺して税金の還付を受けられる「損益通算」という仕組みも利用できます。

しかし、雑所得のままではこれらの強力な節税制度は一切使えません。

つまり、この通達により、「副業で事業としての節税メリットを得たいなら、日々の取引をしっかり記録し、帳簿として保存しなさい」という国からの明確なルールが設定されたわけです。

これは、副業を単なるお小遣い稼ぎではなく、一つの「ビジネス」として扱うための最低限の要件が示されたと言えるでしょう。


なぜ基準が厳格化された?背景にある「赤字申告スキーム」とパブコメの経緯

では、なぜ国税庁はこのような通達改正に踏み切ったのでしょうか。

その背景には、副業ブームの裏で横行していた「過度な節税」や不適切な申告に対する、税務当局の強い危機感がありました。

近年、一部のコンサルタントやSNSの発信において、「実体のない副業でわざと赤字を作り、本業の給与と損益通算して税金を取り戻そう」といった手法が推奨されるケースが目立っていたのです。

例えば、ほとんど活動していないブログ運営や、名ばかりのコンサルティング活動を「事業」と称します。

そして、プライベートな旅行代、家族との飲食代、趣味の買い物を多額の経費として計上し、意図的に大きな赤字を作るわけです。

その赤字を本業の給与から差し引くことで、源泉徴収されていた所得税を取り戻すという、いわば制度の抜け穴を突いたような行為が増加していました。

国税庁はこうした「節税目的だけの事業所得の申告」を問題視し、是正に乗り出しました。

実は、2022年8月に発表された当初の通達の改正案では、「副業の収入が年間300万円を超えない場合は、原則として雑所得とする」という非常に厳しい金額基準が設けられようとしていました。

もしこれが通っていれば、年間300万円も稼げないほとんどの副業は、問答無用で事業所得として認められなくなっていたでしょう。

これに対して、「コツコツ真面目にやっている少額のフリーランスや副業層も事業と認められないのか」と世間から約7,000件ものパブリックコメント(意見)が殺到しました。

これは税務関連のパブリックコメントとしては異例の数であり、大きな社会問題として波紋を呼びました。

その結果、国税庁は金額の一律基準を撤回し、「収入の多寡ではなく、きちんと帳簿をつけて管理しているかどうか」を基準とする、現在の形に落ち着いたという経緯があります。

※画像はAIによるイメージ

【重要】帳簿があっても雑所得になる?知っておくべき「例外規定」の具体的水準

「帳簿さえつければ、どんな副業でも必ず事業所得になる」と安心するのは少し早計です。

今回の通達改正において、私たち50代の副業実践者が最も注意すべきなのは、国税庁が示した「例外規定」の存在です。

国税庁は、形式的に帳簿をつけていたとしても、実態が伴っていない場合は「雑所得」と判定するという方針を明確に示しています。

具体的には、以下の2つのいずれかに該当する場合、事業所得ではなく雑所得とみなされる可能性が極めて高くなります。

1. 副業収入が主たる収入の「10%未満」である場合

まず一つ目の基準は、副業による収入(売上)が、本業である会社員の給与などの「10%未満」にとどまっているケースです。

例えば、本業の給与収入が年間600万円の会社員の場合、副業の売上が年間60万円(月に直すと5万円)に満たない場合は、事業としての規模が小さすぎると判断されやすくなります。

ただし、これはあくまで「原則として」の目安です。

副業を始めたばかりの初年度から3年目くらいまでの育成期間であったり、たまたまその年だけ売上が落ち込んでしまった等の合理的な理由があれば、一律に否定されるものではありません。

2. 概ね「3年連続で赤字」であり、解消の努力が見られない場合

二つ目の基準は、その副業の所得が概ね3年以上にわたって赤字であり、かつ、赤字を解消するための営業活動等を行っていない場合です。

ビジネスである以上、最終的には利益(黒字)を出すことが目的のはずです。

それにもかかわらず、何年にもわたって赤字を垂れ流し、本業の給与と相殺して税金を減らしているだけの状態は、「節税目的の活動であり、事業とは呼べない」とみなされます。

この例外規定が設けられたことで、「とりあえず形だけ会計ソフトに入力して帳簿を作り、無理やり赤字にして還付を受けよう」という安易なスキームは完全に封じられたと言ってよいでしょう。

私たちにとって大切なのは、規模が小さくても黒字化を目指し、適正な価格で価値を提供し続けるという「事業主としての誠実な姿勢」なのです。


50代の副業で認められる「経費」の基本と家事按分の考え方

通達改正により帳簿の重要性が増したとはいえ、日々の経理の基本はこれまでと変わりません。

「経費」とは一言でいえば、「その副業の収入を得るために直接かかった費用」のことです。

副業で得た収入(売上)からこの経費を差し引いた残りの金額が「所得」となり、この所得に対して税金がかかります。

判断の基準は常に、「その支出が、副業の業務に直接必要だったかどうか」という一点に尽きます。

経費として計上できるものの代表例

これから50代の方がパソコンなどを使って小さな副業(ライティング、動画編集、コンサルティングなど)を始める場合、以下のようなものが経費として考えられます。

  • 通信費:副業で使うインターネットの回線料金、スマートフォンの通信費、レンタルサーバー代など。
  • 消耗品費:10万円未満のパソコンやタブレット、プリンターのインク、コピー用紙、文房具など。
  • 新聞図書費:業務に必要な知識を得るために購入した専門書、ビジネス誌、有料のメールマガジン購読料など。
  • 旅費交通費:クライアントとの打ち合わせや取材に行くための電車代、バス代など。
  • 外注工賃:自分のホームページの作成を外部の専門家に依頼した際の費用など。

なお、パソコンなどの備品は、購入額が10万円以上の場合は「減価償却資産」となり、一度に全額を経費にできず、数年に分けて経費化するルールがあるため注意が必要です(青色申告の場合は30万円未満まで一括経費にできる特例があります)。

経費として認められないもの

一方で、副業に直接関係のない個人的な支出は、当然ながら経費にはなりません。

  • プライベートな飲食代や旅行代:家族との食事や趣味の旅行は経費にできません。「ついでに少し仕事の話をした」程度では認められないと考えましょう。
  • 自身の医療費や健康維持費:スポーツジムの会費やサプリメント代など。体が資本とはいえ、業務に直接必要な支出とはみなされません。
  • 所得税や住民税:これらは利益が出た結果として個人が納める税金であり、利益を生み出すための費用ではありません。

「これは経費になるかな?」と迷ったときは、「もし税務調査官に理由を聞かれたら、仕事にどうしても必要だったと客観的に説明できるか」を自分に問いかけてみてください。

自宅で作業する場合の「家事按分」の計算方法

定年前後の副業の多くは、自宅のパソコンを使って行うことになるでしょう。

その場合、家賃や電気代などのように仕事とプライベートの両方で使っている費用は、「仕事で使った分だけ」を合理的に計算して経費にすることができます。

これを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。

例えば、賃貸マンションの家賃であれば、「自宅の総面積のうち、仕事部屋として使っている面積の割合」で計算するのが一般的です。

総面積が60平方メートルで、仕事専用に使っている部屋が12平方メートルなら、家賃の20%を経費として計上できます。

通信費や電気代であれば、「1週間のうち、副業のために作業している時間の割合」や「コンセントの数」などを基準にします。

毎日3時間、週に21時間副業をしているなら、1週間の総時間(168時間)の約12.5%を経費とする、といった具合です。

一度この客観的な基準を決めたら、みだりに変えず、継続して同じルールで計算していくことが、税務署に対する信頼性につながります。


青色申告と白色申告の違い:定年前に知るべき税務のリアル

副業の「所得(収入から経費を引いた額)」が年間20万円を超えると、翌年の2月〜3月に確定申告をする必要があります。

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2つのやり方があります。

国税庁通達の通り、帳簿をつけて事業所得を目指すのであれば、税制メリットの大きい青色申告を視野に入れたいところです。

白色申告:手軽だが節税メリットは少ない

特別な事前の手続きをしなければ、確定申告は自動的にこの「白色申告」になります。

帳簿のつけ方も、家計簿のように「いつ・どこで・何に・いくら使ったか」を記録するだけ(単式簿記)でよいため、初心者の方でもそれほど難しくありません。

ただし、後述する青色申告のような「特別控除」という節税効果はありません。

副業を始めたばかりでまだ収入が少ない時期や、帳簿をつけずに「雑所得」として申告する場合は、こちらの方法になります。

青色申告:事業を育てたい人に必須の制度

副業の規模が少し大きくなり、帳簿をしっかりつけて「事業所得」として申告する場合は、青色申告を選ぶことができます。

最大の魅力は「最大65万円の青色申告特別控除」です。

これは、実際にかかった経費とは別に、最大65万円を所得から無条件で差し引くことができるという強力な節税制度です。

所得が減れば、それに連動して所得税や翌年の住民税、国民健康保険料なども安くなるため、手元に残るお金が大きく変わってきます。

ただし、青色申告をするには、開業した日から2ヶ月以内(またはその年の3月15日まで)に所轄の税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

さらに、複式簿記という正規のルールで記帳を行う義務があります。

「複式簿記なんて難しそう」と思われるかもしれませんが、今は優秀なクラウド会計ソフトが安価で利用できます。

クレジットカードや事業用の銀行口座をソフトに連携させれば自動で複式簿記に変換してくれるため、会計の知識がなくても十分に対応可能です。

※画像はAIによるイメージ

税務調査の最新トレンドとインボイス制度が副業に与える実務的影響

国税庁のルールが厳格化している背景には、行政側のシステム進化も関係しています。

50代の皆さんがこれから副業を安全に営む上で、知っておくべき最新の税務トレンドが2つあります。

税務調査の強化と無申告への厳しい目

一つ目は、税務調査における情報収集能力の飛躍的な向上です。

昔は「少額の副業ならバレないだろう」と高を括る人もいましたが、今は全く通用しません。

税務署はクラウドソーシングサイト(ランサーズやクラウドワークスなど)や、暗号資産の取引所、フリマアプリの運営会社などに対し、取引記録の照会を積極的に行っています。

また、マイナンバー制度の普及により、報酬を支払った企業側が提出する「支払調書」と個人の申告状況の突合が容易になりました。

事実、国税庁が毎年発表している調査事績でも、インターネット取引や副業に関する申告漏れの指摘件数は増加の一途を辿っています。

意図的な無申告や過度な経費計上が発覚すれば、重加算税という重いペナルティが課されます。

規模の大小に関わらず、最初から「正しい記録と申告」を習慣づけることが最も安全な道です。

インボイス制度による免税事業者への影響

二つ目は、2023年10月から開始された「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」の影響です。

これまで、年間売上が1,000万円以下の小規模な副業者(免税事業者)は、消費税の納税を免除されていました。

しかしインボイス制度の導入により、取引先(企業)から「インボイス(適格請求書)を発行してほしい」と求められるケースが増えています。

インボイスを発行するためには、自ら進んで課税事業者となり、受け取った消費税を国に納めなければなりません。

もし免税事業者のままでいることを選んだ場合、取引先は消費税の仕入税額控除ができなくなるため、報酬の値下げ交渉を受けたり、最悪の場合は取引を見直されたりするリスクがあります。

特に、企業を相手にするWebライティングやコンサルティングなどの副業をする場合、このインボイスの登録をするかどうかの判断は、売上と利益に直結する重要な実務問題です。

これもまた、「副業だから適当でいい」という時代が終わり、小規模であっても事業主としての知識と判断が求められている証左だと言えるでしょう。


記者(大滝)の考察:定年前の副業こそ「小さな事業」として正しく育てる

長年会社員として勤め上げ、定年という人生の節目が見えてきた50代。

この時期に副業を始め、今回の国税庁通達やインボイス制度のようなニュースに直面しながら、自分で経費を計算して確定申告を経験することは、単なる「お小遣い稼ぎ」以上の深い意味があると私は考えています。

会社員時代、私たちはパソコンも文房具も交通費も、すべて会社が用意してくれた環境の中で仕事をしてきました。

社会保険料や税金も、経理の担当者が給与から自動的に天引きしてくれていたため、会社のお金と税金の流れを実感する機会は少なかったはずです。

しかし、いざ自分で副業を始めると、ボールペン1本買うのにも「これは自分の事業への投資としてふさわしいか」というシビアな実感が伴います。

家賃や電気代を家事按分する中で、自分の生活と仕事がどう結びついているのかを客観的に見つめ直すことにもなります。

昨今、副業に関する税務調査が強化され、帳簿の保存が厳格化されたというニュースを聞くと、「面倒だな」「なんだか怖いな」と感じる方も多いでしょう。

しかし、筆者としては、この流れは決して悪いことではないと考えています。

なぜなら、売上と経費を正確に記録し、利益を把握するという行為は、ビジネスの基本中の基本だからです。

国税庁の通達は、「副業であっても、ビジネスとして真剣に取り組む人には青色申告という恩恵を与えますよ」という後押しとも受け取れます。

定年退職という大きな環境の変化が訪れる前に、まだ会社員の給与という安心な土台があるうちに、小さく始めて「記帳」や「経費管理」に慣れておく。

これは、「雇われ人」から「小さな事業主」へとマインドを切り替え、定年後の収入の柱を育てるための、最高の事前準備だと確信しています。

最初はレシートの1枚、数百円の経費からで構いません。

わからないことは会計ソフトが助けてくれますし、税務署の相談窓口も親切に教えてくれます。

年齢や税務ルールの変化を理由に尻込みせず、まずはノートに日々の記録をつけることから、ご自身の事業に向けた歩みを静かに進めてみませんか。


まとめ

この記事では、国税庁の通達改正というニュースを背景に、副業の事業所得判定と経費計上のやり方について解説しました。

  • 2022年の国税庁通達により、副業を「事業所得」とするには原則として帳簿書類の保存が必須となった。
  • 帳簿がない場合は「雑所得」となり、青色申告の特別控除や赤字の損益通算が利用できなくなる。
  • 帳簿があっても「本業収入の10%未満」や「概ね3年以上の連続赤字」の場合は、例外的に雑所得と判定されるリスクがある。
  • 経費にできるのは業務に直接必要な支出のみであり、自宅の家賃や電気代などは「家事按分」で客観的に計算する。
  • 税務調査の強化やインボイス制度の導入など、副業であっても事業主としての正しい実務知識が求められる時代になっている。
  • 定年前の50代にとって、正しい記帳と確定申告を学ぶことは、定年後の収入基盤を作るための絶好の準備となる。

よくある質問

領収書をもらい忘れた、または紛失した場合は経費にできませんか?

レシートや領収書がないと原則として経費の証明が難しくなりますが、どうしても紛失した場合は、市販の「出金伝票」に日付・支払先・金額・目的を正直に記入しておくことで、経費として認められるケースがあります。

交通系ICカードで電車に乗った場合なども、利用履歴を印字するか、出金伝票に都度記録を残しておくことが大切です。

会社員で副業の所得が20万円以下なら、何も手続きしなくていいですか?

会社員で副業の「所得(収入から経費を引いた額)」が年間20万円以下の場合は、税務署への「所得税の確定申告」は不要です。

しかし、お住まいの市区町村へ納める「住民税」については、1円でも所得があれば申告の義務があるため、役所で住民税の申告手続きを必ず行う必要があります。

経費の支払いに個人のクレジットカードを使っても大丈夫ですか?

個人のクレジットカードを使っても経費として計上することは可能です。

しかし、プライベートの買い物と混ざると後から記帳するのが非常に大変になるため、できれば副業専用のクレジットカードと、売上を受け取るための専用銀行口座をそれぞれ1つずつ作っておくことを強くお勧めします。


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— 大滝 学

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